女将ごあいさつ
大分県安心院(あじむ)の「やまさ旅館」は大正九年創業のすぽん専門料亭です。
初代の山上作太郎は、美食家としても著名な大正時代の政治家・故.木下謙次郎氏と親交が厚く、謙次郎氏に促されるようにして、すっぽん料理屋を開きました。
謙次郎氏は当時ベストセラーとなった著書『美味求真』の中で、「あにこれ鼈の高産地としての総ての条件を完備させる理想の水郷ならずや」と安心院こそが極上すっぽんを育てあげる最適の地と記されております。
また、「其の滋味の優逸なるは、多くの食品中第一に推すべし」と鼈(すっぽん)の滋味を真っ先に挙げ、「其の肉の特徴として、多食して飽満の気を起こさず、食へば食ふほど逸味の加はる感あることなり」と、いくら食べても食べ飽きることがなく、食べるほどに味わいが増すことを強調し、食通が最後にたどり着く食としてすっぽんを紹介されております。
現在では、すっぽん料理は安心院の名物料理となりましたが、安心院におけるすっぽんの歴史は、まさに当店の誕生とともに始まったのです。
昭和初期の当店
『美味求真』
著者:木下謙次郎
出版社:啓成社(大正14年)
文豪も愛した安心院すっぽん
当店がある安心院盆地は、四方を山々に囲まれ、3つの渓谷に沿って深見川・津房川・佐田川が流れております。夏には蛍が舞うこれらの川は、すっぽんをはじめ鯉・鮒・鮠などが棲み、豊かな川の幸をもたらせてくれます。また、ここ安心院は温暖な気候に恵まれ果物や穀物なども豊かに実る地でもあります。
田植えの時期には、お百姓さんが田んぼで捕まえた天然すっぽんを当店に持ち寄られたり、釣り人が持参されることもあります。よく「天然のすっぽんは泥臭いのでは?」との声をいただきますが、安心院の清流で育ったすっぽんは肉質が良く、クセや臭みが極端に少ないため刺身としても召し上がれます。時期やタイミングによりますが、当店ではお客様の希望により天然ものをご提供することも御座います。
また、昭和の文豪・故.松本清張氏は、古代史研究や取材などで大分に訪れた際には必ずといっていいほど当店へ立ち寄られ、すっぽん料理に舌鼓を打たれておられました。晩年には病床からお取り寄せ頂くなど、当店の安心院すっぽんは滋味深い最良の食材として、清張氏をはじめ多くの著名人の方に愛されてまいりました。
清張氏よりいただいた色紙
すっぽん一筋100有余年 料亭やまさ3つのこだわり
極上すっぽんのみ厳選
安全で美味しいすっぽん料理をお出しするため、健康なすっぽん作りから始めました。
清流を引いた当店専用の養殖池で餌にこだわり、2年以上の歳月をかけ冬眠を繰り返すことで脂が黄色い上質な肉となります。
鶏肉に近いあっさりとした肉と上質な魚にあるような脂の味わいは滋味深く、これまで多くのお客様を虜にしてまいりました。
また、当店では1kg以上に成長したすっぽんのみを厳選しています。1kg以下のすっぽんでは脂が十分にのっていないため、すっぽん本来の旨みを味わうことはできません。
黄色い脂が上質の証
クセや臭みを除去
当店では調理する1カ月前から敷地内のいけすで、すっぽんの餌断ちをしています。これにより、驚くほど臭みやクセがなくなり、お子様からご年配の方まで多くの方にお楽しみ頂いております。 また、生姜や醤油で味をごまかすことなく素材本来の味を楽しんで頂けるよう、"水炊き"にてすっぽん鍋をご提供しております。当店の自家製ポン酢をつけてお召し上がり下さい。
とろみの強い特性出汁
秘伝の特性出汁
甲羅(こうら)を4時間以上煮込む特性出汁の作り方は代々店主だけに受け継がれてきました。コラーゲンたっぷりの特性出汁を使った当店自慢のすっぽん鍋は上品な味わいと多くのお客様に好評いただいております。